遠方の土地を相続したものの、使う予定がなく管理も難しい。相続土地国庫帰属制度を調べるうち、「境界を明らかにする必要がある」と知り、高額な測量が必須なのか気になる人もいるでしょう。

法務省の案内では、事前の測量や境界確認書の提出が、すべての申請で必須とされているわけではありません。ただし、引き取ってもらいたい土地の範囲が現地で分かり、その範囲に争いがないことなどが求められます。

「境界が明らか」と「測量図がある」は同じ条件ではない

制度で問題になる境界は、所有権の範囲です。申請者が認識する隣地との境界を現地で確認でき、隣地所有者の認識と相違がなく、争いがないことが重要になります。

既存の境界標や地形、工作物などを使って境界点を示せる場合もあります。目印がない場合は、申請者が認識する境界点を表示する必要がありますが、隣地の同意なく都合のよい位置に線を決めてよいわけではありません。

法務省は、測量成果や境界確認書を必須の添付書面とはしていません。一方、手元にある場合には、審査やその後の管理の参考になるため、可能な限り写しを提出するよう案内しています。まず既存資料で何が分かるかを整理しましょう。

境界以外にも、引き取れない土地の要件がある

相続土地国庫帰属制度は、原則として相続や一定の遺贈によって取得した土地について、審査と承認、負担金の納付を経て国庫へ帰属させる制度です。売買で購入した土地などが当然に対象となるわけではありません。

建物がある土地、担保権等が設定された土地、境界や所有権の範囲に争いがある土地などには、申請段階での制限があります。管理に過大な費用や労力を要する状態など、不承認となる要件もあります。

そのため、境界測量をすれば必ず国に引き取ってもらえるとはいえません。多額の調査や工事を始める前に、土地の状況全体について、管轄法務局の相談窓口で対象になり得るかを確認することが大切です。

土地家屋調査士に相談できる範囲を知る

現地のどこが自分の土地か分からない、境界の資料を読み取れないといった場合には、土地家屋調査士に所在や筆界の調査を相談できます。ただし、筆界と所有権の範囲が異なる場合もあるため、調査の結果と権利関係を照合する必要があります。

この制度の承認申請について、本人が選んだ任意代理人に手続全体を委任することは認められていません。申請書類の作成を業務として依頼できる資格者についても、法務省は弁護士、司法書士、行政書士を案内しています。土地家屋調査士へ境界調査を頼むことと、申請全体を代行してもらうことは区別してください。

相談には、登記事項証明書、公図、手元の測量図、土地全体と境界付近の写真などを用意します。境界の問題が不明なのか、隣地所有者と争いがあるのかによっても、先にすべきことが変わります。

不要な測量を一律に行うのではなく、制度の要件と現地の不足情報を照らし合わせ、必要な調査を検討しましょう。それが、申請の見通しと費用を現実的に判断することにつながります。