古くなったブロック塀を建て替えようとしたら、隣から「その塀はうちの土地にある」と言われた。長年、自分の庭を囲んでいた塀でも、その位置が当然に土地の境界になるとは限りません。
この場面では、土地の区切りがどこなのかという問題と、塀を誰が所有しているのかという問題を分けて調べる必要があります。工事を急いで進めると、確認に役立つ現物を失うことにもなりかねません。
塀の位置、筆界、所有権の範囲は必ずしも一致しない
登記上の一筆の土地を区切る線を「筆界」といいます。これに対し、所有権が及ぶ範囲を示す線は「所有権界」と呼ばれます。通常は重なることが多いものの、一致しない場合もあります。
塀は境界を調べる資料の一つですが、土地の内側に控えて建てたものや、以前の所有者が便宜的に設置したものかもしれません。塀があるという事実だけでは、その中心や端が筆界だと断定できません。
また、長年使ってきた土地については取得時効が争点になる場合もありますが、「20年使えば必ず自分の土地になる」という単純な話ではありません。占有の性質など法律上の要件を検討する必要があり、年月だけを数えて境界を動かすことはできません。
塀が共有なのかも、設置経緯を調べる
民法には、境界線上の囲障や障壁などを隣り合う所有者の共有と推定する規定があります。ただし、あらゆる塀が無条件に共有になるわけではありません。そもそも境界線上にあるのか、誰が費用を負担したのか、設置時にどのような合意をしたのかといった事情が関わります。
古い工事の契約書、領収書、売買時の説明資料、以前の所有者との書面などが残っていないか確認しましょう。塀の基礎や控え壁がどこにあるかも、現地で確認しておきたい情報です。
所有者がはっきりしないまま塀を撤去すると、相手の財産を壊したとして問題になる可能性があります。境界の確認と、塀の撤去・建て替えへの同意は別々に整理し、工事の範囲や費用の話も書面に残すことを検討してください。
調査が終わる前に、境界の痕跡を消さない
土地家屋調査士には、現地の塀の位置と登記資料、測量図、境界標との関係を調べてもらいます。調査前には、塀の全体、基礎、周辺の杭などを撮影し、いつ誰が作ったと聞いているのかも整理しておくと説明しやすくなります。
調査の結果、筆界の位置に意見の相違が残るなら、筆界特定などの手続を検討します。所有権の帰属や取得時効、撤去費用の争いについては、弁護士への相談が必要になることがあります。
ひび割れや傾きがあり危険な塀では、安全確保も急がなければなりません。周囲への立入りを避ける措置や専門業者による安全点検について相談しながら、位置の記録を残します。安全対策と境界の確認を並行して進め、曖昧な認識のまま新しい塀を作らないことが大切です。