土地を売る準備を進めていたところ、隣地所有者から「立会いには応じない」と言われた。測量が進まず、予定していた引渡しに間に合うか不安になる場面です。
立会いへの協力が得られない場合でも、すべての手続が直ちに不可能になるとは限りません。ただし、相手の署名を省けば済むわけでもありません。拒否の理由と、何について意見が分かれているのかを整理することが出発点になります。
日程の問題か、境界の位置への異議か
仕事で時間が取れない、依頼者との関係に不安がある、示された境界線に納得できない。いずれも「立会いをしない」という返答になり得ますが、必要な対応は異なります。まず依頼した土地家屋調査士に、これまでの連絡経緯と相手の説明を伝えましょう。
日程調整や資料の事前説明で解消できる問題もあります。一方、別の境界線を主張しているなら、双方が持つ図面や境界標、過去の経緯を調べ、主張の根拠を比較する必要があります。相手の拒否だけを理由に、こちらの認識が正しいと結論づけることはできません。
分筆や地積更正の申請では、筆界を明らかにすることが重要です。どの情報で筆界を確認できるかは資料や現地の事情によるため、立会いの可否だけで登記できる・できないと断定しないことが大切です。
筆界特定で明らかになるのは「もともとの筆界」
法務局の筆界特定制度は、登記上の区画を示す筆界の位置を、資料や現地調査などに基づいて明らかにする制度です。新しく境界線を作る手続ではなく、隣地所有者が同意しないことだけで利用できなくなるものでもありません。
申請人と関係人には意見や資料を提出する機会があり、筆界特定登記官が外部専門家の意見を踏まえて判断します。土地家屋調査士に、申請手続の代理や事前の資料整理を相談できます。
ただし、筆界特定は所有権の範囲を最終的に決めたり、越境物の撤去を命じたりする手続ではありません。結果に納得できず裁判で争うことも可能です。筆界特定をすれば売買上の問題がすべて解消する、という説明は適切ではありません。
話合いの支援が適する場合もある
境界問題相談センターなどの土地家屋調査士会ADRでは、土地家屋調査士と弁護士が関わり、境界に関する民事紛争の話合いを支援します。当事者間の合意を目指すため、相手が手続に応じるかなども確認が必要です。
ADRで依頼者の代理をする業務は、所定の認定を受けた土地家屋調査士が、弁護士と共同で受任する場合に限られます。センターで話合いを進める人の役割と、自分の代理人の役割も区別して相談しましょう。
売却を予定しているなら、問題の見通しを不動産会社にも伝え、契約条件や引渡日の調整を検討します。隣人への説得を繰り返すだけで時間を使うより、筆界、所有権、越境などの争点に応じて、利用する手続と相談先を選ぶことが重要です。