土地を分けて売りたいのに、隣は長年空き家のまま。登記簿の所有者宛てに連絡しても返事がなく、近所の人からは「もう亡くなったらしい」と聞いた。境界の確認相手を見つけられない場合、計画を進める方法はあるのでしょうか。

法務省は、隣地所有者が不明な場合でも、精度の高い地図や地積測量図などから筆界を確認できることがあると案内しています。まずは、連絡が取れない事情と、使える境界資料を調べることになります。

空き家の管理者と土地の所有者は同じとは限らない

郵便受けの名札や近所の話は、調査の手がかりにはなります。しかし、建物と土地の所有者が異なる場合や、登記名義人が亡くなって相続が発生している場合もあります。目の前の空き家の情報だけで、境界を確認すべき相手を判断することはできません。

確認の基本となるのは隣接する土地の登記記録です。その住所に連絡しても届かないのか、死亡の情報があるのか、単に返答がないのかを整理します。土地家屋調査士には、これまでの連絡方法や返送された郵便など、判明している経緯を伝えましょう。

専門家による所有者・相続人の調査にも、目的に応じた法令上の範囲があります。誰でも自由に他人の戸籍や住所を調べられるわけではなく、事案に応じて必要な手続を検討します。

2022年からの運用で、資料による確認が可能な場合も

分筆や地積更正の登記では、対象土地の筆界を明らかにする必要があります。隣地が所有者不明土地の場合については、2022年10月から全国の法務局で、筆界確認情報の取扱いを見直した運用が始まっています。

ただし、所有者が分からなければ何も確認せず登記できる、という仕組みではありません。地図や測量図の精度、現地に復元できる情報があるかなど、筆界を認定するための条件を確認する必要があります。資料が十分でない場合は、追加の調査や別の手続を検討することになります。

また、所有者が不明な場合と、所有者が分かっていて境界の位置を争っている場合は事情が異なります。「返事がないから所有者不明として扱える」と自己判断せず、法務局や土地家屋調査士に具体的な状況を説明してください。

筆界特定や管理制度を検討するときの注意

資料だけでは進めにくい場合には、筆界特定制度が選択肢になることがあります。所在不明の関係人に対する通知には法定の手続があり、相手の不在を理由にこちらで境界線を決めてよいわけではありません。

一方、隣地の売却や利用許可、越境物の対応などまで必要なら、筆界の確認とは別に、所有者不明土地に関する管理制度などの検討が必要になる場合があります。裁判所の手続や権利関係については弁護士などに相談し、測量だけで解決できる範囲を見極めます。

売買の予定があるときは、通常の立会いより調査に時間を要する可能性を日程に織り込んでください。隣地の問題が分かった段階で相談を始め、必要な調査と申請の見通しを立てることが、計画を止めたままにしないための第一歩です。